「私と日本SF」難波弘之

小学生で乱歩、ポオ、ウエルズにハマり、中学生になってから本格的にSFを読み始めた。もちろん、海外SFやミステリにも夢中になったが、名作と言われている作品がいまひとつ理解出来なかったり、ピンと来なかったりしたことが幾度かあり(最近になって新訳が出るようになり、実はそれが翻訳の問題であったことがようやくわかってきたのだが、笑)、日本人作家の作品の方がより親しめた。

中でも、もう今さらジュブナイルでもなかろうと思ったが、思い切って買った盛光社 ジュニアSFシリーズ全十巻が圧巻であった。
  眉村卓「なぞの転校生」、光瀬龍「夕映え作戦」、筒井康隆「時をかける少女」など、長く名作として残った記念すべき作品群が並んでいた画期的なラインナップだった。子供向けだからと侮る事なかれ。どの作家も全力投球の力作揃い。今でも大切に保管してあるので、そのうち読み直してみようと思う。

僕が「SFマガジン」を読み始めたのは昭和40年代に入ってからだったので、後追いで早川SFシリーズの日本人作家の短編集や日本SFシリーズも夢中で読みふけった。それ以外の昭和30年代のSFは、古本屋を巡って探しまくったものである。懐かしい(笑)!

日本SFシリーズの中で好きだったのは、ショート・ショートの作家だと思われていた星新一の、モダン・ホラーっぽい味わいの長編「夢魔の標的」である。各作家がみな作風が異なり、日本SFの世界の幅の広さと奥の深さを感じまくった。この傾向が今日まで続いているのは、誠に慶賀すべきことであると思う。

それ以前の作家では、香山滋や安部公房(「全然違う傾向やないか!」という突っ込みが聞こえて来そうだが)をよく読んだ。

香山滋は「ゴジラ」ばかりが有名だが(そう言えば、伊福部昭先生も、その事を苦笑しておられた)、実は耽美的な傑作が沢山ある。故・竹内博さんの家に遊びに行った時に、香山滋コレクションを見せて頂き、陶然とした覚えがある。竹内さんは「妖蝶記」が一番のお気に入りだそうで、さすがの鑑識眼だと思ったが、僕は「地球喪失」がお気に入りである。

安部公房は、ファンレターを書いたり電話したりする迷惑なファンであった(笑)。「宇宙塵」入会後、柴野拓美さんに"「第四間氷期」が好きです"と言ったら、"僕は、あの小説のエンディングから始まるのが本当のSFだと思うんです"とおっしゃったのが印象に残っている。さすが、頑固一徹(笑)!

SF作家円城塔が芥川賞を受賞したことは、まさに快挙である。"駄作のオンパレード"と揶揄した東京都知事には読み取れない小説だったのだろうが、そんな妄言には関係なく、日本SFはこれからも深化と進化を続けるであろう。こうなったら頭がボケて理解出来なくなるまで読み続けるまでだ。

※フクシマレコーズについて・・・難波弘之がレーベル・プロデュースするフクシマレコーズは、実力派ミュージシャンを世に知らしめ、同時に福島の子供たちのための基金を積み立てる目的で設立されたレーベルで、これまで四枚のコンピレーション・アルバムをリリース致しました。これは四枚目の「明日への扉」のジャケットで、SF作家クラブ会員のイラストレーターYOUCHANの作品です。僕のSF人脈をフルに活用し、これまでも浦沢直樹や手塚治虫のジャケットで話題を集めました。