「私と日本SFの出会い」宮部みゆき

『桜ほうさら』宮部みゆき 著(PHP研究所 )

子供のころ、ラジオドラマが好きでした。ラジオの朗読番組も好きでした。

限られた時間内で聴かせるわけですから、短編作品が多くなります。思い出してみると、有名な短編を、私はあらかた耳で聴いたのです。そしてそのなかには、日本SFの傑作も、いくつも入っていました。

一九六〇年生まれの私は、いわゆる〈テレビっ子〉世代ですが、当時の日常のなかには、まだまだラジオもしっかりと根づいていました。高校生になると、当然のように深夜放送のリスナーになりました。二十代の後半まで、夜更かしができないときには録音して、私はラジオを聴いていました。ラジオドラマや朗読番組も健在で、またいくつもの有名作品と、耳からお知り合いになることができました。

そういう生活が変わってしまったのは、いつごろのことだったのか。自分でもしかとはわからないまま、古ぼけたラジカセは物置にしまいこんで、忘れてしまった――

ところが、五十の坂にかかった昨年、思わぬことからまたラジオに親しむようになりました。そう、東日本大震災と福島第一原発の事故です。節電のために、惰性でつけっぱなしにしていたテレビを消し、ラジオをつける。そういう生活になって、ラジオは再び私の親しい友達に戻ってきてくれました。

お風呂に入りながらラジオを聴いていたら朗読番組が始まり、

「小松左京作 『日本アパッチ族』」

と、タイトルコールがあってびっくり!そのままずっと耳を傾けていて、あやうく湯あたりしそうになったのは最近のことです。

人生の折り返し地点を過ぎて、出発点の〈耳で聴く〉ところに立ち戻った。この巡り合わせの妙に、近ごろの私は自分でSF短編を書きながら、ときどき声に出して読んだりしています。懐かしいけれど新しい。そんなSFを書けたらいいなあと念じつつ。