「若おかみは年中さん」 久美沙織

「若おかみは年中さん」 久美沙織(002)

2009年9月中旬。日本SF作家クラブは、信州松本、美ヶ原温泉の追分屋旅館さんにて、『神林長平さん三十周年お祝いの宴』をひらきました。

2007年から高千穂遙会長のもとで事務局長を拝命しておりました私めにとって、これは、任期の最後を飾った大イベント。経理もITもサッパリでスタッフのみなさまに頼りきりな私でしたが、この『宴』は、こればっかりは、「私が責任をもって立案企画し、実行した!」と胸をはっていうことのできる催しとなりました。

松本周辺に狙いをさだめ、たまたま見つけたのが、追分屋さん。候補の何軒かに電話をしたところ、圧倒的に感じがよかったので熱烈交渉しました。事前に現地に出向き、こんどお世話になりますとご挨拶しつつ周辺情報を収拾、プログレスレポートを作成。部屋割りをし、アクセスを調べ、送迎バスを手配し……いや楽しかったです。

まるごと占拠したので、自由でのびのび過ごせたと思います。お泊まり部屋以外に、玄関横のラウンジや足湯のある縁側など、楽しい居場所がたくさんありました。神林さんと奥さまにご用意した一泊ウン万円の豪華はなれにも、大勢見物におしかけました。好きな色柄の浴衣を選んではおり、何種類かのお風呂に入ったり出たり。お料理自慢の宿でしたから、宴も朝食も最高でした。しかも旅館のちょっと裏手が会長(当時)のおめがねにかなう自転車登攀コース! おそろしいほど何もかもピタリピタリとはまりました。私はもう少しで、自分に旅行代理店的な才能があるのではないかと勘違いするところでした。

もちろん徹夜部屋も作りました。持ち込みのお酒やツマミで気軽に交流していただくべく。私が遅れて行ってみると、当時保育園の年中さんだった娘が会場入り口に陣取って甚平姿で接客していました。「いらっしゃいませいらっしゃいませ! ビールですか、酎ハイですか、それともウーロン茶?」水を得た鯉とはこのことで、まるで『若おかみは小学生』でした。娘は、いまも時々思い出しては「あれは楽しかった。またやりたい」とうっとりした瞳で申します。無理です。あんな夢のような時間はそうあるもんじゃありません。そもそも一宿借りあげなんてゼイタク、個人には不可能だし。あの時、幼い娘の背伸びと本気のゴッコ遊びに、優しく付き合ってくださったみなみなさまに感謝です!

ちなみに各社編集者さまには「おとなの」ご配慮をいただき、旅館側の(有料の)バーで、ぞんぶんに飲み食いしていただきましたようで、これまた感謝です。

参加者の多くが、色紙やサイン本を旅館に寄贈してくださいました。きっと飾ってあることでしょう。読者のかたが見つけて驚いてくださったりすると楽しいなと思います。